100分de名著 アドラー「人生の意味の心理学」  第2回 自分を苦しめているものの正体 まとめ

出演者 司会 武内 陶子

       伊集院 光

    ゲスト 岸見 一郎 (哲学者・カウンセラー)

 

 

自分を苦しめているものの正体

      自分を好きにはなれない多くの人々を苦しめる「劣等感」。

     それを克服する手立てはないのか。

      アドラーは、人間の営みには、「優越感」と「劣等感」が絡ん

      でいると考えた。 それらは人々を悩ませ、生きずらさを生みだすが、

      一方では生きる力を生みだすこともある。

      自分を好きになれない理由としては、「自分大好き」とは言いずらい

      文化的側面が大いに関係している。 

      「自分なんて大したことはありません」などと、

      自分を必要以上にへりくだったり、

      「自分好き=ナルシスト」と後ろ指さされかねない環境が日本にはある。

      程々にしていれば「謙虚」で済ませられるが、

      度を超すと人の心を歪める。

      人はたとえそのやり方を間違えようとも、常に自分のためになりことを 

      追い求めて生きている。

      アドラーは、今より優れた存在でありたいと考えて

      生きる人間のありかたを

     「優越性の追求」と呼んだ。

      その優越性の追求に対となすのが「劣等感」。

     劣等感は人間なら誰もが持っており、努力や成長のエネルギーとなる。

     しかし方法を誤ると、我々を苦しめるものとなる。

 

 

 

理想の自分と現実とのギャップ=劣等感

  行き過ぎた劣等感

  劣等コンプレック

          ・AであるからBできない  ・AでないからBできない

        例   A:不細工だから     A:イケメンじゃないから

            B:彼女ができない    B:彼女ができない

     

        AとBとの間には因果関係はないのだが、

        思い込んでいる場合が多い。

        その思い込みを、「見せかけの因果律」と呼ぶ

      

  見せかけの因果律

     最もらしい因果関係を持ち出して、人生の課題から逃げようとすること。

 

     生きていれば、自分の思い通りに行かない局面は多々ある。

    例に挙げた「モテない」という現実に対して、

    「顔の悪さ」を理由としているが、

    もし、性格の悪さでモテないとしたらどうだろう。

     悩みの主が整形手術で顔を変えてもモテない現状のままであり、

    より問題は根深くなる。

     性格の悪さよりも顔の悪さを理由としたほうが自分が傷つかないので、

    そういう意味づけをしているに過ぎない。

     そういう生き方は否定はしないが、生きる喜びには乏しい。

    そんな悪い現実ばかり起こるわけではないと経験してみる価値はある。

     ただし、経験するには「勇気」がいる。

 

 

     番組で青年が安土羅先生に「彼女ができない」と悩み、

    相談する場面がある。

    聞くと青年にはコンプレックスがあり、それが原因で彼女ができないという。

      

      青年のコンプレックス ・顔

                 ・身長が低い

                 ・低学歴

                 ・給料が低く、仕事がイケてない

                 ・コンプレックスに悩む僻みっぽい性格

     

     もし、その青年の持つ顔が好きな女性がいれば、

     上記に挙げたコンプレックは、思い込みである。

    重要なのは自身の持つ、

    「顔」「肉体」「性格」にどのような価値をあたえるか。

    身長や年収などは、あくまで他者との比較で生まれたものであって、

    彼女がいないこととは何の因果関係もない。

     この場合、そもそも青年は本当に彼女が欲しいか疑う必要がある。

    「もし自分が○○だったら」という可能性に生きていたいがために。

     ではそうだとして、一体どうすればいいのだろうか?

    アドラーは、「ありのままの自分」で始めることを説いている。

 

 

 

過度な優越感

  優越コンプレック

        ・自分を実態よりも優れているように見せようとする

         例   学歴自慢  

             肩書を誇示する

             全身をブランド品で固める

             過去の栄光にすがりつく

             人の手柄を我が物にする

 

        こういう奴はよくいる。 

        たいしたことのない自分を

        覆い隠すかのような行動は滑稽ですらある。

 

         ・他者からどう見られているか非常に気にする

          他人がどう思うかは自分ではコントロールのしようがない

 

         ・自分で自分の理想を高くしようとする

          ハードルを必要以上に高く上げ、自分に価値があると思いたい

          地道に努力することを避け、

          困難なことに挑戦している自分に酔いたい人

 

         ・相手の価値を貶め、自分の価値を相対的に上げようとする

          別名「価値低減効果」 

           例  いじめ

              差別

              パワハラ 

         ・不幸自慢

          「私の不幸は、あなたにはわからないわ!」と、

          優越性に浸っている。  

          不幸であることによって特別であろうとしている。

          これは、「劣等コンプレックス」も併発している。

 

    劣等コンプレックスと優越コンプレックスはつながっている。

 

優越・劣等コンプレックスから抜け出すには?

  普通であることの勇気を持ち、ありのままの自分からはじめよう。

 特別に良くも悪くもなろうとしなくていい。

  ライバルの存在は励みになるが、競争しなくていい。

 上を目指すのではなく、平面を歩いていくイメージ。

  劣等感は他人との比較にハマると、自らが下にいると認識した他者を見下したり、

  反対に上にいると認識する他者を羨み、妬む弊害に悩まされるが、

  理想と現実のギャップを埋めるために自分を高めていくのであれば、

 (平面の)前へ歩いていける。